モノクローナル抗体の新時代-2Epoch of Monoclonal Antibody-2
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モノクローナル抗体の利用
モノクローナル抗体は特定の構造とだけ結合する。この特異性を利用して生体の成分(蛋白質)を探すのに使用される。モノクローナル抗体の使用目的は研究用が圧倒的に多い。また、病気の診断にも用いられる。薬としての使用もある。
生命研究ではからだを構成している蛋白質を研究する。哺乳類では遺伝子が約22,000個あり、その遺伝子から作られる蛋白質も同程度あることになる。この蛋白質を研究するにはこの蛋白質を探しだし、どこに、どのくらいの量があるかを調べる必要がある。このとき、目的の蛋白質を探し出す一番簡単な方法がモノクローナル抗体を用いることである。抗体のもつ特定の構造(蛋白質)とのみ結合する性質が役立つのである(図3)。医学、薬学の研究に限らず、動物学、植物学、農学の研究でも、細菌・ウイルス学の研究でも抗体はなくてはならない試薬である。
図3 モノクローナル抗体を用いたヒト腎臓の基底膜染色。2種類の抗体を用いた染色。目的の2種類の蛋白質が染め分けられている。
多くのモノクローナル抗体が研究用試薬として売られている。カタログの厚さは3cmを超えるものが数社ある。インターネットでも多くのモノクローナル抗体を探すことができる。しかし、研究者からみると欲しい抗体が無い状態である。研究者が扱う蛋白質は未知の蛋白質であることが多いため当然であるが(図4)。
図4 研究者が欲しい抗体は売られていない
研究以外では病気の診断に使用されている。からだの中の特定の蛋白質が欠損している病気の診断、感染症の診断などである。そして少ないが病気の治療にも抗体が使用されている。
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