重井医学研究所

モノクローナル抗体の新時代-6Epoch of Monoclonal Antibody-6

    • モノクローナル抗体は簡単にできるという理解が必要

       モノクローナル抗体の作製はマウスリンパ節法ラットリンパ節法の開発により、培養設備のある研究室であるならば簡単に作製できるようになった。特別の研究室から普通の研究室でもできるようになるのに30年を必要としたことになる。これからは、モノクローナル抗体の作製の方がポリクローナル抗体の作製より簡単であると言える。ポリクローナル抗体の作製は動物に抗原エマルジョンを投与するだけと考えがちであるが、得られた抗血清が目的の抗原にのみ特異性があるのかどうかを証明するのが非常に難しい。これに対してモノクローナル抗体の作製では、クローンを選択作製する過程で抗体の性質を調査しているため、クローンが得られたときは抗体の性質がほぼ明らかになっている。モノクローナル抗体は永続性があるため、長期にわたる実験が可能、他の研究室への分与など、研究の信頼性を高めるのにも役立つ。


     

    モノクローナル抗体の新時代

    •  ヒト全ゲノムの解読に続き、マウス、ラットなどの全ゲノムの解析が終了している。哺乳類に限らず、鳥類、無脊椎動物、植物、細菌、ウイルスの全ゲノムがこれからどしどし明らかになってくる。このような中で、個々の遺伝子の働きを調べることが研究の中心になってくる。遺伝子から翻訳された蛋白質の働きは実際の蛋白質を調べてみるまで、理解できない。特に、蛋白質と蛋白質の相互作用を解析するにはモノクローナル抗体の助けなしには考えられない。生命科学においてモノクローナル抗体が簡単に使用できることが研究の量と質の向上に必要なことは言うまでもない。マウスリンパ節法が開発された2006年がモノクローナル抗体の新時代の始まりである。リンパ節法が果たす役割はこれから極めて大きくなると思われる。



    • (マウスリンパ節法、マウス腸骨リンパ節法という言葉はこの文章が最初の使用です。英語では The mouse lymph node method, The mouse iliac lymph node method です。Acta Histochemica et Cytochemica 39巻、89-94頁、2006年の Sado らの論文で初めて使用されています。)

      モノクローナル抗体は「作成」それとも「作製」?
      作成は書類・計画などを作り上げることに使用され、作製は物品・図面・印刷物などを具体的に作り出すことに使用されることから、本稿ではモノクローナル抗体を作り出すことは「作製」を用いている。

      以上
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