重井医学研究所

モノクローナル抗体の新時代-3Epoch of Monoclonal Antibody-3

    • モノクローナル抗体の作製方法

       モノクローナル抗体はマウス、ラット、ウサギ、ヒトのものが作製されている。抗体の産生に用いるリンパ球は動物に抗原(蛋白質)を注射して、リンパ球を増やし、その動物の脾臓やリンパ節の中にあるリンパ球をがん細胞と融合させる。

       モノクローナル抗体の作製はマウスが中心である。ラットは補助的に使われることが多く、ウサギは最近作製されるようになったが限られている。ヒトの抗体は抗体医薬と関係しており、抗体を薬として使用する目的のことが多い。

       モノクローナル抗体の作製にはリンパ球(B細胞)が必要である。抗原(抗体産生を促す物質、通常は蛋白質のことが多い)を動物に注射して強制的にリンパ球を増やす。リンパ球が増えるとそれらが作り出す抗体も増える。リンパ球、抗体を多く作らせるために免疫賦活剤(アジュバント)と抗原をよく混ぜ合わせて動物に免疫注射する。注射する部位によってリンパ球と抗体のできる量が異なるため、マウスでは腹腔が、ラットでは後ろ足の裏が使用される。

       ラットの後ろ足に注射し、リンパ節細胞を使用する方法は重井医学研究所で開発された技術である。大変に抗体作製の効率が良いのが特徴である。しかし、マウスでは現在まで腹腔に注射し、脾臓細胞が使用されている。効率は明らかに良くない。これは、マウスが小動物のため、リンパ節が小さく、都合の良いリンパ節が見つからないため、脾臓を使用せざるを得なかったことによる。マウス脾臓の使用は30年にもわたって続いてきた。しかし、マウスでもリンパ節が注目されている。

       ヒトの場合は病気になったヒトのリンパ節細胞を用いて抗体を作製する。患者のリンパ節には病気に関係した病原菌に対する抗体、がん細胞に対する抗体を産生するリンパ球が存在しているからである。抗体の中には病原菌を中和するもの、がん細胞を攻撃するものが得られることがある。これらの抗体は薬として使用できることがある。


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      モノクローナル抗体の作製の新しい戦略

       これからはリンパ節細胞を用いてモノクローナル抗体が作製されるようになる。時間、材料の節約になり、成功率も格段に高まる。必要経費は脾臓細胞を用いる半分程度に下がる。

       モノクローナル抗体の作製には100万円程度が必要であると書いたが、これはマウスの脾臓をリンパ球の材料とした場合である。最近重井医学研究所ではマウスのリンパ節を用いて作製すると、いままでとは比べものにならないくらい早く、しかも、効率良くできることを見つけた。マウスの腸骨リンパ節を使用する方法なのでマウス腸骨リンパ節法と名づけた。簡単にはマウスリンパ節法と呼んでいる。この方法はラットリンパ節法と同様に、動物の免疫注射は1回でよく、リンパ節は注射後2週間で使用でき、抗体の作製効率もよい(図5)。

      図5 小さくても大丈夫。マウスでもリンパ節法が使用できるようになった

       この方法では抗原の注射が1回でよいことから、抗原量の節約になる。注射する手間が省けることから、労力の節約になる。リンパ節の使用は注射後2週間であることから、時間の節約にもなり、抗体ができるかどうかは約1ヶ月で明らかになる。さらに、目的の抗体が得られる可能性が格段に高まる。抗体の作製効率は従来の方法の約10倍である。抗体作製の費用は抗体作製までの時間が節約されることから全工程で従来の半額程度まで下げられると思われる(図6)。

      図6 リンパ節法の効果は抜群。

       研究室で抗体を作製する場合も成功率の上昇から、投資に見合った効果が得られると思う。抗体作製は大学生、大学院修士課程の学生でも問題なくできると思う。抗体を作製する時間の節約にもなるので、抗体ができてからの研究本来の部分に力を入れることができるようになる。自分たちの研究に必要な抗体を自分たちで選び出すことができるのも、研究室で抗体を作る利点になる。

       

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