ラットリンパ節法によるモノクローナル抗体の作製
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ラットリンパ節法の特徴
・ラットに免疫して、ラット腸骨リンパ節を使用します。
・抗原の注射は尾根部へ1回です。←追加免疫は効率を下げます
・1匹の動物の免疫に必要な抗原量は50~100μgです。
・免疫注射後2~3週間で細胞融合を行います。
・抗体ができるかどうかは4週間でわかります。
・従来のマウス脾臓を用いる方法の10倍の効率です。
・サブクラスIgG1、IgG2a、IgG2bが約1:2:1の割合です。
・マウス抗原に対するモノクローナル抗体もできます。
ラットリンパ節法を用いて作製されたモノクローナル抗体の例:ヒトIV型コラーゲンα5鎖に対する抗体。
ヒト腎臓凍結切片を間接蛍光抗体法で染色すると糸球体基底膜、ボウマン嚢基底膜、一部の尿細管基底膜が染色される。
この技術は、重井医学研究所が開発した画期的な技術です。
主要日本語参考文献:
1.佐渡義一,香川 恵 (1997)
ラットリンパ節を用いる,効率的で,しかも,抗原量,労力,時間を節約できるモノクローナル抗体作製法. 生化学 69: 128-131.
2.佐渡義一 (2001)
ラットモノクローナル抗体作製の省力化. 生化学 73: 1163-1167.
3.佐渡義一 (2007)
モノクローナル抗体の作製
組織細胞化学会2007、pp55-77、学際企画
作製のステップ
ステップ1:ラットへの抗原免疫注射(尾根部筋肉内注射), 腸骨リンパ節細胞の凍結保存,抗体価の測定
ステップ2:細胞融合(PEG使用),ELISAスクリーニング。ハイブリドーマの上清のアッセイをして目的のウエルを選択する。
ステップ3:ハイブリドーマのクローニング。陽性ウエルを用いてクローニングを行う。
細胞融合9日目のELISA法による融合細胞のスクリーニングの1例。
全体で100個を超える陽性ウエルが認められる。この中から必要な特性を持った抗体を選び出す。
ラットリンパ節法で作製した抗体の使用例:
腎炎惹起性抗体
同種モノクローナル抗体100μgをラット腹腔に投与するだけで重症の腎炎を惹起できる。投与した抗体は腎基底膜に結合している。モノクローナル抗体を使用しているため確実にいつでも腎炎を起こすことが可能である。
作製スケジュール
・抗原:精製蛋白質,組み換え蛋白質,合成ペプチド,糖鎖,などを用意する。
・必要最低抗原量は1~2mgです。
・抗体作製の用途:ELISA,ウエスタンブロット,免疫染色
・免疫動物:ラット3匹
・免疫に必要な抗原量:ラット1匹あたり50~100μg
・免疫に必要な抗原濃度:500 μg/ml 以上
抗体の使用目的
目的に応じたスクリーニングが必要です
・ウエスタンブロットによる抗原の同定
・ELISA法による生理活性物質の測定
・免疫染色による細胞・組織の染色
・アフィニティカラムを用いて抗原の精製
ラット抗体はマウス抗体と同様に使用できます。ラット抗体であることで不便なことはありません。
! 注 意 !
マウス腸骨リンパ節法は、日本国特許です(特許第4098796号)。
特許権者の実施許可無くマウス腸骨リンパ節法を使用すると、特許法に触れます。
大学・研究所等での基礎研究も例外ではありません。
なお、ラットリンパ節法は特許ではありません。ご自由にお使いください。