病院の中にこんちゅうかん!? 倉敷昆虫館
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 ● 冬の虫の楽しみ方

2025.3.5

岡野貴司・岡本 忠・守安 敦 

 

冬は虫の活動が鈍り、多くは越冬に入っています。しかし冬のみに活動する虫、あるいは冬が採集のチャンスという虫もあり、私たち愛好家はこの時期も虫を求めて出かけます。
その例をご紹介しましょう。
(倉敷昆虫館Facebookで連載していたものをまとめました)

  @ オサムシ D 朽木採集法  
  A フユシャクガ E 秋キリガと春キリガ  
  B ゼフィルスの卵採集 F FIT採集−冬でも活動している微小甲虫  
  C トンボ編 G 越冬態調べ  

 冬の虫の楽しみ方 @オサムシ


コウチュウ目のオサムシは比較的大型で美麗な種が多いため大変人気があります。これを冬に土中から掘り出すのが「オサ掘り」です。林道の斜面などに狙いを定めて掘っていきますが、金属光沢のオサムシが土壌から出てくると本当に嬉しくなります。ただし、採集後の地形の原状回復はお忘れなく。写真左はアオオサムシ(栃木県1976)、右はオオオサムシ(三重県1961)で当館が保管しています。
余談ですが、あの偉大な漫画家の手塚治虫(本名は治)氏は昆虫が大好きな少年であり、このペンネーム(治虫)は今回のオサムシに由来しています。1950年頃まではそのまま「おさむし」と読ませていたとのことです。(岡野)                          

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 冬の虫の楽しみ方 Aフユシャクガ

 
フユシャクガ(漢字で冬尺蛾)とは晩秋〜早春にしか出現しないシャクガ科のガの総称です。3亜科にまたがっており、日本では35種が記録されています。メスは翅が無いか縮小しているため飛翔できません。雌雄とも口吻は著しく短縮しており、基本的には食餌しません。昼に活動するものもいますが、ほとんどが夜行性であり、日没後の比較的早い時間帯に配偶行動が始まります。メスは飛べないため樹木の枝や幹に這い出してきて盛んに性フェロモンを放出します。それにオスが激しく反応し、メスを探して飛び交いますが、この時が採集のチャンスです。
写真はクロテンフユシャクで、左がオス(総社市黒尾2014.1.28)、右がメス(総社市高間2019.2.2)です。(岡野)

                   

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 冬の虫の楽しみ方 Bゼフィルスの卵採集


ゼフィルスとはシジミチョウのグループで、日本には25種が生息しており、美麗種が多く見られます。しかしその分布は限定的なものが多く、また飛翔が早いとか、早朝や夕方の限られた時間にだけ出現するとかで、採集や調査は困難を極めます。
そこで冬に卵を探すという方法がとられます。このグループは特定の樹木に産卵するため、生息していそうな森での樹木探しからスタートします。産卵する場所も冬芽、細枝、太枝、幹など種類によって異なるので、これも頭に入れておかなければなりません。
写真左はナラガシワの太い枝に産みつけられたウスイロオナガシジミの卵塊(新見市草間 2006.12.14)、右はその成虫標本で左が表面、右が裏面(同産地)です。(岡野)

 

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 冬の楽しみ方 Cトンボ編


冬にもトンボの採集はできます。ただ、成虫で生きているのは、オツネントンボ、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボの3種だけで、林の中にいてなかなか出会うことはできません。他のトンボはというと、卵や幼虫(ヤゴ)で冬越しをしています。そこで、冬の採集というともっぱら水網で池や川の中のヤゴをすくうことになります。池では、岸に生えている植物の根際や水草をすくいます。川では、落ち葉がたまった場所、砂がたまっている場所をすくうといろいろなヤゴが採れます。キイロヤマトンボのように、成虫よりもヤゴの方が採集しやすい種もいますし、成虫より確実にその場所に生息していることが証明できたりもします。わかりにくいヤゴは、「ヤゴハンドブック」で種の同定をしています。
写真左はキイロヤマトンボ(岡山市 1993.6.4採集)、右はそのヤゴ(三重県上野市 1960.1.10採集)です。(守安)

 

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冬の虫の楽しみ方 D朽木採集法


朽木採集とは朽ち果てた倒木の中に潜む虫を採集する方法です。
冬に限定した採集方法ではありませんが、冬ならではの目的があり、その一つがクワガタムシの越冬幼虫探しです。クワガタムシの多くは腐食が進んだ倒木やその周辺の土壌に産卵しますが、朽木で見つかる代表がノコギリクワガタです。ミヤマクワガタなどは朽ち木よりもその周辺の土壌に依存しているようです。したがって倒木と周辺の土壌の両方を探す必要があります。
写真はノコギリクワガタ(左オス総社市 2010年、右メス真庭市1966年)です。同時にいろいろなコウチュウ類やハチ類、森林性のゴキブリ類などの越冬成虫も見つかります。ただし朽木を割ることは最小限にとどめるべきであり、また砕いた木片の後片付けも忘れてはいけません。(岡野)

                           

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 冬の虫の楽しみ方 E秋キリガと春キリガ


冬季のみに見られるヤガ科のガには、晩秋〜初冬に出現する秋キリガ(主にキリガ亜科)と晩冬〜早春に出現する春キリガ(主にヨトウガ亜科)の2つのタイプがあります。
採集方法は基本的に糖蜜採集で、人工的に作った糖蜜(私は焼酎、三温糖、食酢で作成)を夜に樹木の幹などに噴霧してガを呼びよせます。条件がよければおびただしいガが集まってきます。上の写真は藤本徹哉さんが2013年2月23日に笠岡市で撮影したもので、カシワオビキリガやホシオビキリガなどが多数糖蜜に集まっています。しかし、まったくの空振りに終わってしまうことも少なくありません。左の写真の上は秋キリガのキバラモクメキリガ(総社市日羽 2016年)、右は春キリガのスギタニキリガ(総社市黒尾 2013年)で、当館が保管しています。(岡野)

   

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 冬の虫の楽しみ方 FFIT採集−冬でも活動している微小甲虫


  近年FIT(Flight interception trap)という罠を使う方法により、地表付近の空間で活動する微小な昆虫などが多く採集されるようになり、しかも夜間に活動するものも採集されるため、その地域の昆虫相解明にも大いに役だっています。FITは透明のプラスチックフィルムを地面に垂直に立てかけたりぶら下げたりしておき、そのフィルムにぶつかって下部に備えた保存溶液を入れた容器に落下させるという仕組みのものです(写真@)。FITを使うことにより冬季でも活動している虫を採ることもできます。
そこで、冬でも活動している微小な甲虫をご紹介いたしましょう。冬採集できる甲虫としては、キスイムシ科やタマキノコムシ科が挙げられますが、ここではタマキノコムシ科の内タマキノコムシ亜科に所属する種について述べてみます。
タマキノコムシは大きさが1〜7mmで2mm程度のものが多く、肉眼で見つけるのは至難の業です(写真A)。落葉や朽木などの菌類を食するものがおり、刺激を与えるとダンゴムシのように丸くなりますので、これらが名前の由来です。
筆者は2006年頃から総社市昭和地区での甲虫類を調査していますが、2011年よりFITを用いた通年調査もおこなっています。現在までに25種のタマキノコムシ類を得ましたが、そのうち7種(28%)が冬期(1・2月)に採集されました。(岡本)

                        

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 冬の虫の楽しみ方 G越冬態調べ


その虫の越冬態が何なのかも重要な生態の一つですが、不明なものが多数あります。
卵・幼虫・蛹(繭)・成虫のどれで越冬するかの調査で、私もいろいろ挑戦してきましたが、ここではその失敗談を紹介します。外来種であるアメリカピンクノメイガ(岡山県では2021年倉敷市玉島で初記録)という小さなガ(翅を広げて7mm)の越冬態はおそらく土中に潜った蛹(繭)であろうと推測し、庭に植えた食草のブルーサルビア(写真左)の根元の土を春先に掘り起こして調べましたが見つかりません。その後、自宅の真備町での初見日(その年に初めて目撃した日)が倉敷市中心部より1ヶ月近くも遅いことに気づきました。真備町での初見の個体は南部の暖かい地域から飛来した可能性があります。つまり真備町はこのテーマを追求するには適切な場所ではなかったようです。
写真右の標本は当館保管の倉敷市二日市産(2021)です。(岡野)

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