「世界の蝶」コーナー @東アジア(ロシア沿海州、朝鮮半島) |
東アジア産は3箱が展示されていますが、そのほとんどが台湾であり、これ以外はロシア沿海州の1頭(博物館では匹ではなく頭と数える)、朝鮮半島の6頭のみです。海外採集ブームの火付け役であった台湾は次回とし、今回はロシア沿海州・朝鮮半島を紹介します。この地域の標本で正確なデータが残されている6頭はすべて戦前のものであり、当時の深いつながりの中で日本に持ち込まれたと思われ、海外採集ブームとは関係はなさそうです。美麗種として人気の高いオオアカボシウスバアゲハは東部シベリアから中国にかけて分布し、一部は朝鮮島北部にも生息しています。この標本(写真)は現在の北朝鮮産で、今では入手困難な貴重なものだと思います。
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「世界の蝶」コーナー A東アジア(台湾) |
台湾は九州と同じくらいの面積ですが、日本のチョウの約1.5倍が記録されているなどチョウの宝庫です。標本箱の写真はシロチョウ科中心のもので、沖縄との共通種がいくつか含まれています。台湾の標本の中で、私が取り上げたいのは台湾特産種のフトオアゲハ(個別の写真)です。中国の近縁種シナフトオアゲハとともに、他のアゲハチョウと比べて太い尾(尾状突起)を持つという特異なグループです。残念ながら記録のラベルがついていませんので、台湾のどこで採集されたのか、どのような経緯でこの標本が当館にあるのかは不明です。以前は生態がまったく分からず幻のチョウでしたが、現在は食樹(幼虫のエサ)も判明するなど、かなり解明されてきました。ただし今は採集禁止であり、厳しく保護されています。
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「世界の蝶」コーナー B東南アジア その1(キシタアゲハ類) |
このコーナーの28箱のうち東南アジアが14箱もあるため3回に分けて紹介します。今回はこの地区の代表的なキシタアゲハ類で、東南アジアを中心に21種(研究者によって異なる)に分類されています。前翅は黒色基調ですが、後翅が光沢のある黄色であることがこの名前の由来となっています。私も東南アジアで何種類かのキシタアゲハを目撃しましたが、はるか上空を滑空している姿は他を圧倒する美しさでした。当館が保管しているのはヘレナキシタアゲハ、サビキモンキシタアゲハなど6種です。しかし現在ではその国の法律によって採集や持ち出しが厳しく規制され、またはワシントン条約によって国際的な商取引が全面的に禁止されています。これらの標本を大切に保管していかなければなりません。
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「世界の蝶」コーナー C東南アジア その2(カザリシロチョウ類) |
東南アジアのチョウの第2弾はシロチョウ科です。温帯や冷帯と違って重厚感があり、また色鮮やかなものが多いようです。ここではカザリシロチョウ類を紹介します。東南アジアを中心に南アジアからオーストラリアにかけて分布しており、約160種からなる大きなグループです。台湾には分布していますが、残念ながら沖縄にはいません。標本箱の写真の右3列のうち、一番右下を除く5種がこの仲間です。幼虫がヤドリギの葉を食べるという変わり者で、ヤドリギが多く寄生している樹林周辺に群生していることがあります。翅の表は白や黒を基調とした比較的地味な色合いですが、翅の裏面は大変鮮やかな色彩です。飛び方も大変緩やかであるため、裏面がよく目立ちます。
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「世界の蝶」コーナー D東南アジア その3(イナズマチョウ類) |
東南アジアのチョウの第3弾は、タテハチョウ科です。このグループは種類が多く、どれを取り上げようかと迷いますが、力強くて種類も多いイナズマチョウの仲間(いくつかの属が含まれる)を選びました。森の中を主な生息地としており、力強い飛翔力で素早く旋回するため、なかなか近づけません。しかし吸水の時に地面に降りてきたり、また発酵した果実にもよく集まってくるので、この時がチャンスです。写真の標本箱の右2列がこの仲間で、右2列目のフィリピンオオイナズマ(4頭)は大きくて迫力満点です。この仲間も前回のカザリシロチョウ同様、台湾には分布していますが沖縄にはいません 。
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「世界の蝶」コーナー E南アジア |
インドを中心とした地域で、熱帯からヒマラヤ山脈のネパールまで多様な環境が含まれます。さすがに我々の仲間もこの地域まではあまり出かけていないようです。テンジクアゲハ(個別写真の左側)はこの地域を代表するチョウで、インドとスリランカに分布しています。浅葱色基調の後翅に流れるような黒い斑紋が実に美しいですね。ネパールの高山性のチョウとしてタカムクシロチョウ(個別写真の右側)を紹介します。ヒマラヤ山脈からミャンマー北部に生息し、なぜか離れて台湾の高山帯にもいます。日本には高山性、または寒冷地性のミヤマシロチョウ、エゾシロチョウが分布し、このタカムクシロチョウと同じ仲間です。
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「世界の蝶」コーナー Fアフリカ |
日本のチョウ愛好家の中でも最も馴染みの薄い地域かも知れません。熱帯だけでなく温帯から乾燥帯まで含んでおり、その特徴を一言で述べるのは難しいです。当館が保管している標本は僅か12頭のみですが、その中にアフリカを代表するザルモクシスオオアゲハがありました。赤道直下の大陸西部に分布し、アジアのアゲハとは異なる独特の風格があります。(個別標本左)もう一つはウスアオシンジュタテハを紹介します。(個別標本右)このタテハモドキ族は日本でも南西諸島を中心に何種類かが記録されていますが、このチョウのような大きなサイズのものはいません。薄青色の真珠光沢があり、大変美しいチョウです。乾燥地域を除くアフリカ全体に比較的広く分布しています。
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「世界の蝶」コーナー Gヨーロッパ |
当館では84頭のヨーロッパのチョウを保管していますが、その半数近くが仕事で現地に派遣されていた倉敷昆虫同好会の会員によるものです。ヨーロッパと日本はユーラシア大陸の東西の端ですが、意外と多くの共通種、または近縁種が見られます。ただしその日本での分布は寒冷地に偏っています。この共通種の例としてシータテハ、コヒオドシ、クジャクチョウなどがあり、近縁種としてモンシロチョウの仲間、ヒメシジミの仲間などがあげられます。ここでは日本では見られないタイプで、ヨーロッパを特色づけるジャノメチョウの仲間を紹介します。写真はコシロジャノメで、明るい草原を好むシロジャノメの仲間です。ヨーロッパでは、草原から灌木林にかけて生息するジャノメチョウの仲間がたくさん見られます。
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「世界の蝶」コーナー H北アメリカ |
観光やビジネスで北アメリカへ行く日本人はたくさんいますが、昆虫目的となるとあまり多くないかもしれません。当館が保管するチョウも17種のみですが、その中で特徴的なトラフアゲハ類とオオカバマダラを紹介します。個別写真左のニシトラフアゲハは人家周辺に普通に見られるので、地域の方にとって大変馴染みの深いアゲハチョウです。オオカバマダラ(個別写真右)は長大な旅を行うことで有名で、メキシコなどから夏にカナダまで旅をし、冬には再びメキシコに戻って越冬します。日本のアサギマダラも同じタイプで、台湾などの南の地域からから北日本までの旅を毎年繰り返しています。
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「世界の蝶」コーナー I中〜南アメリカ(その1) |
いよいよこのシリーズも最後の地域を残すのみとなりました。中南米はとてつもなく昆虫の多い所で、予定の2回の枠に納まりそうにありません。今回のモルフォチョウは大変人気の高いグループで、アジア・アフリカの同じ熱帯雨林でも類似のチョウはいないと思います。キラキラと青色に輝く構造色の大型種であり、こんなチョウが熱帯の強烈な日差しの中を飛んでいる姿を想像するだけでワクワクしてきます。しかし翅の裏面は茶色基調の中に蛇の目の紋が並んでおり、表面の色調との不思議なギャップを感じます。実はモルフォチョウは、蛇の目の紋の本家であるジャノメチョウに近いグループであり、この裏面を見ると納得できます。個別写真の左はアマトンテモルフォの表面、右は同種の裏面です。
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「世界の蝶」コーナー J中〜南アメリカ(その2) |
中南米の2回目としてタテハチョウ科ドクチョウ属を選びました。毒蝶という名前にびっくりされるかしれませんが、ドクチョウ亜科は日本を含めて世界に広く分布しています。幼虫が食べる植物に有害物質が含まれているので鳥などがこのチョウを食べないという意味であり、人に直接危害を与えるということではありません。このドクチョウ属は中南米特有のもので、種類も約50種と豊富です。翅が細長くて紋様や色合いもよく似ているため、集団で鳥などの天敵に警告を与えていると言われています。比較的ゆっくりと飛びますが、天敵に襲われないという自信があるからでしょうか。
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