倉敷昆虫同好会
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虫たちの素顔
 
 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (1)
 

 2匹で狩りする獲物はヒロヘリアオイラガ (2009.10.4)

 酒津の桜並木を1本ずつ見て回ると、かなり高い比率でヨコヅナサシガメ幼虫の群れが見つかります。一方、10月上旬のこの時期、鮮やかな緑をしたヒロヘリアオイラガの老熟幼虫が繭づくりの場所を探して樹表を歩き回っています。
 その幼虫が2匹のヨコヅナ幼虫に刺され体液を吸われていました。サシガメにチクリとやられると人間でも激痛に悲鳴を上げたくなるほどで、この致命的な一刺しに、一瞬にして失神もしくは昇天したことでしょう。刺された場所はむくれ上がり変色していました。
 ヨコヅナもヒロヘリも以前の酒津では決してみられなかった外来種で、ここでも国際化の一こまが見られるとは。時代も変わりました。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2009.10.4)
倉敷市酒津 (2009.10.4)
 
 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (2)
 

 危なっかしい越冬集団 (2010.1.10)

 新年になって、ソメイヨシノの樹幹を見て回っていましたら、数本の樹に集団越冬している姿が観察されました。幹の深いくぼみに潜んでいるのが通常なのですが、この小さな群れは幹の北西側の浅いくぼみに集まっていました。昨秋、狩りをしていたヒロヘリアオイラガの繭抜け殻の傍らに集まっているのが面白いですね。ただし、この集団は1月13日には、わずか3頭の群れに縮小していました。浅いくぼみでは危険過ぎたようです。
光沢のある黒地に白斑と鮮紅班を浮かしている5齢幼虫。威嚇模様でしょうね。東南アジア、中国と西日本に見られ、今も日本国内では東進傾向があるようです。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2010.1.10)
倉敷市酒津 (2010.1.10)
 
 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (3)
 

 たったの3匹になっちゃって (2010.1.13)

 3日前に見たときは、桜の樹幹のこの位置に10数匹が群れていたのに、寒さの厳しい今日は、たったの3匹になっていました。この集団は基本原則に沿えなかったため、このような悲惨な羽目になったのだと思われます。
越冬昆虫が厳しい寒さをしのぐ原則は、ひどい寒気にさらされず、温度日較差の少ない部位に潜んでいることでしょう。この桜の樹幹には深いくぼみがなく、やむなく北西面の浅いくぼみにいたため、寒波の襲来でパニックに陥ったようです。よく見ると1匹はヒロヘリアオイラガの破れ繭に入って蟄居姿勢を保っています。ところが、2匹は触角も広げ脚ものばして狼狽ぶりがうかがえますが、低温のため動けずに立ち往生の状態でした。自然の厳しさがひしひしと伝わってきました。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2010.1.13)
倉敷市酒津 (2010.1.13)
 
 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (4)
 

 羽化時の護身に警告色発揚の技 (2010.1.13)

 例年なら4月には羽化を終えるはずが、今年は異常な春の寒さ続きで、ゴールデンウィークに入って、やっと羽化が始まりました。
どんな時間帯に羽化するのか、9時半頃、見に行ったときは、見られず、正午過ぎにもう一度、見に行ったところ、羽化真っ最中の個体がいました。無防備で最も危険な羽化を、白昼堂々とエノキ樹幹の表面で行っていたのです。その秘密は、ど派手な警告色にあると踏みました。艶やかな真っ赤な姿となって脱皮するさまには度肝を抜かれます。やがて、体が固まると体色のほとんどは黒変し、白と赤を従とした色調に変わります。毒液を注入する口吻を持ったハンターの力の誇示を見せつけられた思いでした。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2010.5.4)
倉敷市酒津 (2010.5.4)
 
 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (5)
 

 早くも獲物を仕留めた新成虫 (2010.5.4)

 羽化を終えた新成虫は、光沢の強い真黒色と白色を基調とした鮮やかな姿に変わります。脚の付け根には赤色部も残っており、頭部と脚には長い剛毛を密生しているため、輪郭がぼやけてはいるものの、威嚇的な警告色に身を固めたハンター、躍如たるものがあります。
エノキ樹表で羽化して間のない新成虫の足元には、早くも鋭い口吻で刺され、絶命していると思われるトビケラ一種が横たわっています。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2010.5.4)
倉敷市酒津 (2010.5.4)
 

 ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni (6)

 

 これが野生の世界の現実 (2010.6.12)

 季節はヨコヅナサシガメの成虫出現期になりました。昨秋はヒロヘリアオイラガの幼虫がヨコヅナサシガメ幼虫によって血祭りに上げられている現場を目撃しましたが、今日はヒロヘリアオイラガの成虫がヨコヅナサシガメの成虫に捕まり、体液を吸われている現場に遭遇しました。南方系外来種同士の因果な関係が成立。ヒロヘリアオイラガは在来種のイラガをほとんど駆逐していましたが、数が増えた結果、今度は自分がヨコヅナサシガメの格好の獲物にされているようで。こうして、生き物相互の関係の中で生息数のバランスが取られて行くようですね。(青野孝昭)

ヨコヅナサシガメ 倉敷市酒津 (2010.6.12)

倉敷市酒津 (2010.6.12)

 
 
 

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電話:086-422-8207 
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倉敷昆虫館はしげい病院の1階にあります。展示および収蔵標本は主に倉敷昆虫同好会員による半世紀以上の調査活動の成果によるものであり、そのうち3200種14000点を展示しています。  
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