倉敷昆虫同好会
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虫たちの素顔
 
 ツマキチョウ Anthocharis scolymus
 

蝶の食材にも国際化の波が (2009.5.2)

 倉敷市を流れる高梁川右岸の酒津・水江地区に広がる河原は、以前、レキと砂が豊かでしたが、変貌を遂げ、現在は川岸林とオギなどからなる草原が広い面積を占めています。
 そこに施された野道で、この個体に出会いました。こきざみに羽ばたきながら直線的に飛んで行く姿を見て、押っ取り刀で後を追いますが、なかなか止まってくれません。いつもそうなのです。ところが、この日は、まだ、午前の食事時間だったのか、黄色い花にとまって吸蜜を始め、辛うじて写真を撮らせてくれました。後日、その花は、自然史博物館学芸員の狩山さんにセイヨウカラシナの花であろうと教えていただきました。
 この蝶は春にだけ現れるスプリング-エフェメラルです。雄には、前ばねの先端に黄色紋がありますが、雌には黄色部はなく淡い緑色部があるだけです。 (青野孝昭)

ツマキチョウ 倉敷市水江 (2009.5.2)
倉敷市水江 (2009.5.2)
 
 ツマキチョウ(2) Anthocharis scolymus
 

飛び立つとき、口吻はどうするの (2009.5.2)

 口吻をのばして、力強く蜜を吸っていたのに、もう尽きたのか、早くも飛び立ちました。離陸する旅客機が車輪を仕舞うように、蝶も飛び立ちながら口吻を巻いて仕舞うのですね。写真に撮らないと見えない動作でした。
ツマキチョウの後ばね裏面は緑色の唐草模様で飾られていて、前ばねの先がかぎ型になっているのと並んで、独特な雰囲気を持っています。
年1化性。卵はタネツケバナやジャニンジンなどアブラナ科植物の花穂に産み付けられ、幼虫はその果実を食べて3週間ほどで成長。その後は、蛹のまま長期間を過ごし、翌年の早春に羽化します。
中国大陸から朝鮮半島を経てわが国に達する東アジア特産種です。 (青野孝昭)

ツマキチョウ 倉敷市水江 (2009.5.2)
倉敷市水江 (2009.5.2)
 
 ツマキチョウ Anthocharis scolymus (3)
 

 厳粛な産卵に立ち会いました (2010.5.2)

 ツマキチョウのメス個体が小刻みに羽ばたきながら目の前を通り過ぎて行きました。低空飛行で、どうも産卵行動くさい。谷間の路傍に生える草に止まっては、飛び立つという動作を繰り返しています。慌てて追っかけ、何とか産卵の一瞬を捉えることができました。草の名前は、重井薬用植物園の片岡さんがチョウの止まっている茎に細かい毛が見えることから、タネツケバナであろうと教えてくれました。
1卵ずつ産み付けられた卵は、孵化すると、ぐんぐん成長、遅くとも6月上旬には蛹化を終え、翌年の春になってやっと羽化し、チョウとなって現れます。(青野孝昭)

ツマキチョウ 岡山県総社市槻本谷 (2010.5.2)

岡山県総社市槻本谷 (2010.5.2)

 
 
 
 
 

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〒710-0051岡山県倉敷市幸町2-30しげい病院1階倉敷昆虫館研究室内
 
電話:086-422-8207 
E-mail:
kurakon@shigei.or.jp

 
倉敷昆虫館はしげい病院の1階にあります。展示および収蔵標本は主に倉敷昆虫同好会員による半世紀以上の調査活動の成果によるものであり、そのうち3200種14000点を展示しています。  
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