東日本大震災により被災された方々にお見舞い申し上げます。東日本大震災は、各地で甚大な被害をもたらしましたが、博物館などの自然系、科学系施設も例外でなく、多くの被害がありました。そのうちの一つ、岩手県の陸前高田市立博物館では、津波に襲われ、学芸員など職員にも犠牲者が出たほか、標本を収めている収蔵庫も津波によって泥や塩をかぶりました。被災後1か月以上が経過して発見されたため、一部の標本はカビやバクテリアが発生していました。
この被災した植物標本は、東北の自然環境の貴重な自然史資料であることから、岩手県立博物館が中心となり、全国の自然系博物館が分担して、被災した植物標本の修復作業を行うことになりました。
倉敷市立自然史博物館でも、岩手県立博物館の要請により、299点の陸前高田市植物標本の修復作業を行うことになりました。当園では、被災地支援活動の一環として、この修復作業に市民ボランティアの方々とともに参加し、作業を行いました。その修復作業の様子を紹介いたします。
▲被災した標本。津波のため、塩分を含んだ泥や砂、水に浸かった状態でした。 | ▲標本は一枚一枚、ビニール袋に入れられて保管されていましたが、泥まみれになっている標本もありました。 |
▲標本の一部の拡大。葉に白いカビが発生しています。 | ▲修復作業の様子。ビニール袋を切り開き、取り出した標本を水を張ったトレイに入れ、筆やピンセットで汚れを慎重に取り除いていきます。 |
▲トレイの水に沈める際も、乱暴にすると標本が破損するので、細心の注意が必要です。 | ▲筆を用いて、標本表面の泥やカビをできる限り取り除いていきます。標本を破損しないように慎重に。 |
▲標本によっては非常に細かい作業になります。片手にピンセット、もう一方に筆を持って作業。 | ▲汚れを取り除いた標本は、新聞紙にはさみ、しばらく流水で塩抜きを行います。写真は塩抜きをした標本の余分な水気を新聞紙で吸水する作業。この作業後、熱風乾燥機に入れて乾燥させます。 |