▲ピンク色の花は可愛らしいが、栽培からの逸出により、世界各地で野生化している強健な外来種でもある。 | ▲葉は長さ1~6cm程度の楕円形~卵状披針形。葉の縁は全縁か浅い鋸歯があり、ゆるやかに波うつ。 |
ユウゲショウはアカバナユウゲショウとも呼ばれ、アメリカ大陸(熱帯地域)原産の外来(帰化)植物で、日本国内では、主に関東以西の市街地や荒れ地、耕作地周辺など日当たりが良く、乾燥気味の場所で見られる多年草です。世界の暖温帯地域に広く帰化しており、日本には明治時代に観賞用の園芸植物として持ち込まれたものが逸出(逃げ出し)、野生化したとされます。
花は5~9月頃にかけ、茎上部の葉腋に直径1.5~2cmほどの淡紅色の4弁の花を多数咲かせます。花弁には赤色の筋があり、柱頭(雌しべの先端)は大きく4裂して平開します。葉は長さ1~6cm、幅1~2cm程度の楕円形~卵状披針形で、葉の縁はゆるやかに波うち、ほぼ全縁か、波型の浅い鋸歯があります。若い葉の表裏にはまばらに白毛がありますが、しばらくすると葉脈上を除いてはほぼ無毛となります。高さ10~60cmほどになる茎には白色の毛が生えており、特に日当たりの良い場所などでは、しばしば赤色となります。根はそれほど長くはないものの、太いゴボウ状となり、良く乾燥に耐えます。庭などに意図せず侵入した場合には、茎を持って引き抜こうとしても、なかなか引き抜けず、根がちぎれて残った場合には根から再生するため、厄介な雑草となります。花後にできる果実は、同属のツキミソウ O. tetraptera などと同様、4つの大きな稜とその間に低い稜の8稜がある、長さ1cm程度、直径5mm程度の卵型の蒴果(果実が割れて種子を散布する)で、果実が雨などで濡れると4つに大きく裂けて平開し、雨の水滴の衝撃などによって種子を散布する、「雨滴散布」型の果実です。
▲茎には白色の毛が生え、日当たりの良い場所などではしばしば赤色となる。(緑色の場合もある) | ▲地下の根は太く、ゴボウ状となり、良く乾燥に耐える。茎を持って根まで引き抜くことは難しい。 |
本種は「アカバナユウゲショウ」とも呼ばれ、その名で掲載している植物図鑑も多くありますが、最近ではどちらかというと単に「ユウゲショウ」として、「アカバナ…」を別名としている図鑑の方が多いようです。ちなみに「アカバナ」とは、本種の花色が赤いことを意味するのではなく、花の色や形が、同じアカバナ科の在来種、アカバナ Epilobium pyrricholophum に似ていることに由来するようです。白花品も時折見られますが、白花品が「ユウゲショウ」というわけではありません。
▲果実は雨などで濡れると大きく4裂して平開し、雨粒の衝撃で種子が散布される。 | ▲同じアカバナ科の在来種、アカバナ。花がこのアカバナに似ているので、「アカバナ…」の名がついた。 |
また、「ユウゲショウ」とは「夕化粧」の意味ですが、これはオシロイバナの別名であるとも、マツヨイグサの仲間の別名であるとも言われます。マツヨイグサの仲間の花は、夕方に咲いて朝にはしぼみますが、オシロイバナの花も、マツヨイグサの仲間よりは開花が早いものの、夕方頃に開花し、翌日の午前中にはしぼみます。どちらが正しい、というわけではなく、どちらも夕方に咲く花として、「夕化粧」と呼ばれたのかもしれません。それでは、「ユウゲショウ」の名を持つ本種の花も夕方に咲く…と思われがちですが、観察をしてみると、通常、開花するのは明け方頃で、日中開花して夕方頃にしぼむ、一日花のようです。植物の開花は、時期や気候によって、多少ずれたり延びたりしますので、夕方に咲くことがないとは言い切れませんが、命名の根拠としては弱そうです。「アカバナ」に似て、「ユウゲショウ(マツヨイグサ類)」と同属の花なので「アカバナユウゲショウ」とされたと考えるのが適当かもしれません。「花は夕方に咲く」としてある植物図鑑もありますが、これは和名からの思い込みによる、誤解であろうと思われます。
参考文献:清水健美 編.2003.日本の帰化植物.p.148. 平凡社./清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七 編・著.2001..日本帰化植物写真図鑑. p.212.全国農村教育協会./門田裕一 監修.2013.増補改訂新版 野に咲く花.p.319.山と渓谷社.
(2017.6.25)
▲花が夕方頃に開花するので、ユウゲショウの別名を持つオシロイバナ。マツヨイグサ類も同じ別名を持つ。 | ▲開花の様子のインターバル撮影(撮影:2017年6月2日)。開花は明け方頃であることが分かる。 |