ヤマジソはシソ科の一年草で、北海道・本州・四国・九州から朝鮮半島に分布していますが、まれな植物であるため、環境庁の2000年版レッドデータブックには絶滅危惧Ⅱ類(VU)にランクされています。岡山県下では絶滅危惧IB類(EN)のホソバヤマジソより生育地が少ないためで、ホソバヤマジソの留意種より高い危急種にランクされています。
ヤマジソもホソバヤマジソと同様、日当たりの良い山地や丘陵に生えていて、茎の高さは10~30cmで直立しますが、生育地によっては根元から茎の上部にかけて多くの長い枝を広げますので、ホソバヤマジソに比べると葉の幅も広くこんもり茂った感じに見えます。触るとホソバヤマジソのカルバクロールと違ってチモールの匂いがします。秋になると全体に紫色を帯びてきます。
花は8月から10月にかけて次々に開きます。ホソバヤマジソと同様に最初から花穂を作らず、葉腋に1~3花、普通は背中合わせに2花を付け、花が終るとその上部に次の2花を付けます。この様に上へ上へと咲いてゆき、花の下には花後果実となったものが次々に穂になります。この穂はホソバヤマジソが3cmでそれ以上には伸びないのと違って長く成長し、10~15cmにもなります。
ヤマジソとホソバヤマジソとはイヌコウジュ属の他の種類と違って、花穂を作ってその下部から順々に咲くのではなく、花が咲いてからその後に果実の穂を作るために花は常に穂の頂上に咲くことと、穂に大型の苞を付ける点とが共通して違っています。
ホソバヤマジソは、葉が極めて細いという特徴があるために識別し易いのですが、ヤマジソは葉が広いために、他のイヌコウジュ属植物と混同されて識別できないのかも知れません。よくヤマジソと称する写真を見ますが、花穂の中間部に多数の花の咲いている別種を誤認しているものが多いようです。
私が初めてこの植物に出会ったのは、岡山県内中部の山間湿地のほとりでした。第一印象ではホソバヤマジソに何となく似ているなという感じでしたので 一株だけ持ち帰り、園内に植えてよく観察した結果、ヤマジソであることが判明しました。それ以来毎年園内のどこかに生えて20数年間生き続けています。その後倉敷市内の山でも発見されましたが、最初に見つけた場所は、自然公園に開発されて絶滅してしまったようです。
ヤマジソとホソバヤマジソの種子を、県の自然保護センター内に播いてもらっていますので、関心のある方は観察会のときにでも見ておいてください。
2003.10.16 | 2003.11.13 |
花の咲き方 | ||
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