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おかやまの植物事典

サカキ(APGⅢ:サカキ科,モッコク科/エングラー:ツバキ科) Cleyera japonica

葉は革質で光沢がある。古来より神聖な木とされ、枝は神前に捧げる玉串として使われている。 6~7月頃、下向きに芳香のある白色の5弁花を咲かせる。花弁は花が終わりに近づくにつれて黄色味を帯びる。

▲葉は革質で光沢がある。古来より神聖な木とされ、枝は神前に捧げる玉串として使われている。

▲6~7月頃、下向きに芳香のある白色の5弁花を咲かせる。花弁は花が終わりに近づくにつれて黄色味を帯びる。

 

サカキは本州の関東地方以南、四国、九州の山地の常緑林内に生育する高さ10mほどになる常緑小高木(生育環境によっては低木)です。日本国外では朝鮮半島南部、中国南部、台湾などに分布します。葉は互生、長さ7~10cm、幅2~4cm程度の長楕円状広披針形、全縁(葉の縁に鋸歯がない)で革質、表面には光沢があり、先端は尖らず、鈍頭または円頭になります。葉は枝を挟むようにして平面的に2列に着きます。若枝の先に着く冬芽は、下部の葉腋に着く葉芽よりもはるかに大きく、まるで鳥や恐竜の爪のように弓状に曲がることが多く、冬期には真っ赤に色づくことが多いため、本種の良い識別ポイントとなります。樹皮は赤褐色~灰褐色で、丸い皮目が散在します。枝部分は若枝は緑白色をしていますが、やがて灰褐色~灰黒色へと変化します。

花は6~7月頃、葉腋(葉の付け根部分)に1個あるいは2~3個がまとまって付き、下向きに白色で直径1cmほどの5弁花を咲かせます。花弁は花が終わりに近づくにつれ黄色味を帯びます。花にはあまり強くはないものの芳香があり、梅雨の晴れ間には様々な昆虫が訪花しています。下向きに咲く花は、花弁が傘のように雄しべの花粉が雨に濡れないようにする役割を果たしていると思われますが、そのため、訪花する昆虫は、下から花にしがみついて花粉や蜜を食べることができるハチやアブの仲間が多いようです。

サカキの花に訪れたキムネクマバチ。昆虫にとっては梅雨の時期の貴重な蜜源である。 枝先の冬芽は大型で弓状に曲がっており、鳥や恐竜の爪のよう。冬期には写真のように赤くなるものが多い。
▲サカキの花に訪れたキムネクマバチ。昆虫にとっては梅雨の時期の貴重な蜜源である。 ▲枝先の冬芽は大型で弓状に曲がっており、鳥や恐竜の爪のよう。冬期には写真のように赤くなるものが多い。

 

果実は直径7~8mm程度の黒紫色の液果で、10月頃に熟します。内部には直径2~3mm程度の種子が入っています。種子の数は果実によって数個から10個以上ある場合もあります。果実は毒はないので口に入れても大丈夫ですが、特に美味しくはないうえ、かつては赤紫色の染料に使われたともいうだけあって、皮膚に付着するとなかなか落ちませんので、人による味見はあまりお勧めはしません。しかし鳥にとっては、秋~初冬に熟す樹木の果実の中では比較的美味しい果実のようで、比較的早く鳥に食べられて無くなる果実です。

果実は直径7~8mm程度の黒紫色の液果で、10月頃にに熟す。人には美味しくない果実だが、鳥は良く食べる。 果実内部には2~3mmの黒色の種子がある。果実の汁は皮膚に付着するとなかなか落ちない。
▲果実は直径7~8mm程度の黒紫色の液果で、10月頃にに熟す。人には美味しくない果実だが、鳥は良く食べる。 ▲果実内部には2~3mmの黒色の種子がある。果実の汁は皮膚に付着するとなかなか落ちない。

 

本種は旧来の分類体系(クロンキスト、エングラー)では、ツバキ科とされていましたが、分子系統解析の結果を反映した新しい分類体系(APG)ではモッコク属、ヒサカキ属とともにツバキ科からPentaphylacaceae(ペンタフィラクス科)に移されました。ただし、ペンタフィラクス属の植物は日本にはないため、サカキ科あるいはモッコク科と呼ばれています。

和名の「サカキ」は漢字では「榊」と書きますが、これは本種が古来より神前に供える玉串などとして神事に用いられていたため、木偏に「神」の字を組み合わせた、神の依り代である神聖な木であることを表した国字(中国から伝来したのではなく、日本で考案された漢字)です。「さかき」の名の由来には、神と人の領域を分ける「境木」、冬でも葉をつけて栄えている木「栄木」など、様々な説がありますが、万葉集、古事記、日本書紀などには「賢木」として登場します。「賢い(かしこい)」は「畏い/恐い」とも書き、神聖なものや尊いものに対する畏怖の念を表しますから、「賢木」とはやはり神に捧げる神聖な木であることを意味するようです。古事記の天の岩戸の場面では「眞賢木」と書かれており、この「ま・さかき」が本種を指すならば、「さかき」とは本来、同じく神事に使う他の常緑樹(例えば岡山県ではヒサカキ、ソヨゴなど)を含めた広義の名であったと考えることが適当かもしれません。

(2018.2.18)

樹皮は丸い皮目が散在し、暗赤褐色~灰褐色。 枝は若枝は緑白色、やがて灰褐色~灰黒色に変化する。
▲樹皮は丸い皮目が散在し、暗赤褐色~灰褐色。 ▲枝は若枝は緑白色、やがて灰褐色~灰黒色に変化する。

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