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おかやまの植物事典

ミソナオシ(マメ科) Ohwia caudata

日当たりのよい場所に生育する小低木。分布域は比較的広いが、レッドデータ種となっている府県も多い。 葉は3小葉、表面はやや光沢があり、裏面は白色を帯びる。写真では見えないが、葉柄には狭い翼が付く。
▲日当たりのよい場所に生育する小低木。分布域は比較的広いが、レッドデータ種となっている府県も多い。 ▲葉は3小葉、表面はやや光沢があり、裏面は白色を帯びる。写真では見えないが、葉柄には狭い翼が付く。

 

ミソナオシは関東以西の本州、四国、九州、沖縄の低山の林縁、路傍、草原など日当たりの良い場所に生育する小低木です。国外では朝鮮半島、中国、台湾など東アジアと、インドシナ半島からインド、ヒマラヤ西部などにも分布しています。インドネシアのスマトラ島などにも分布しますが、連続的に分布しているわけではなく、それぞれの生育地域が離れた「隔離分布」となっています。

高さは普通1m程度ですが、最大で2m程度になります。葉は3小葉で互生、表面には少し光沢があり、裏面はやや白色を帯びます。小葉は披針形で長さ3~9cm、頂小葉が最も大きくなり、葉柄には狭い翼があります。若い枝は緑色をしており、草本のように見えますが、2年目以降の樹皮は灰色で皮目があります。花は8~10月、葉腋から出した花序に黄白色または緑白色の蝶形花を花序の下部から少しずつ咲かせます。果実は4~6節がある長さ5~8cmの節果(豆のさやがくびれていて、1つづつの分果に分かれている)で、果実は表面にカギ状の剛毛を持ち、節ごとに折れて、動物の毛や人間の衣服に付着して運ばれる、「ひっつきむし」型の果実です。

花は8~10月、葉腋から花序を出し、下部から少しずつ咲いていく。 花冠はマメ科らしい蝶形花だが、黄白色または緑白色で目立たない。
▲花は8~10月、葉腋から花序を出し、下部から少しずつ咲いていく。 ▲花冠はマメ科らしい蝶形花だが、黄白色または緑白色で目立たない。

 

マメ科の「ひっつきむし」としては、ヌスビトハギ(盗人萩)の仲間が良く知られていますが、本種の果実にはヌスビトハギの仲間ほど明瞭なくびれはありません。本種は従来はヌスビトハギ属とされていましたが、近年の分子系統解析の結果、この仲間はヌスビトハギ Hylodesmum属、シバハギ Desmodium属などに分けられ、本種もミソナオシ属として独立しています。

本種は比較的広い分布域を持っていますが、あまり多くはないようで、環境省のレッドリストには記載されていませんが、都道府県レベルではレッドデータ種としている府県も少なくありません。岡山県においても、レッドデータ種とはされていないものの、そうそう出会う植物ではありません。植物図鑑にも掲載のないことが多く、知名度はあまり高くない植物です。花も地味で目立たず、藪のような場所に生えていることが多いため、気付かれにくいことも一因かもしれません。

果実は4~6節がある節果となる。動物の体毛や人の衣服などに付着して運ばれる「くっつきむし」 若い枝は緑色のため、草本のようにも見えるが、2年目以降の枝(樹皮)は、灰色で皮目がある。
▲果実は4~6節がある節果となる。動物の体毛や人の衣服などに付着して運ばれる「くっつきむし」 ▲若い枝は緑色のため、草本のようにも見えるが、2年目以降の枝(樹皮)は、灰色で皮目がある。

 

和名は「味噌直し」で、本種の茎葉を味噌に入れると「味噌の味がなおる」とされたことによります。実際、全草にアルカロイドなどの成分を含んでおり、中国では全草を「青酒缸(せいしゅこう)」、根を「青酒缸根」と呼び、生薬として用いられます。2013(平成25)年には、含有されるフラボノイド類に味噌に発生する白カビを抑制する効果があることが確認されています徳島大ウェブサイト プレスリリース http://www.tokushima-u.ac.jp/docs/2013082600035/files/20130823.pdf

図鑑や書籍によっては「味噌に発生した虫(ウジ)を殺す」と解説されていることも多いのですが、これは本種の別名(地方名)に、便所の「ウジ殺し」として利用したことに由来する「うじくさ」という名があり、このウジ殺しとしての用途と混同したものと考えられ、誤った説明です。当然ながら、ウジがわくほど腐敗した味噌は本種を投入したとしても食べることはできません。本種を入れておくことで、白カビの発生を抑える、強いて言えば、白カビが発生しかけた味噌を「直す」程度の効能であったと考えられますが、冷蔵庫のなかった時代には、非常に有用な植物であったこともまた、間違いないものと思われます。

(2016.12.18)

外来種アレチヌスビトハギの節果(一番上)とミソナオシの果実。ミソナオシの果実のくびれは浅い。 果実の表面には、かぎ型の短毛が密生しており、この毛で衣服などに付着する。
▲外来種アレチヌスビトハギの節果(一番上)とミソナオシの果実。ミソナオシの果実のくびれは浅い。 ▲果実の表面には、かぎ型の短毛が密生しており、この毛で衣服などに付着する。

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