環境省レッドリスト(2007):該当なし / 岡山県レッドデータブック(2009):絶滅危惧Ⅰ類
▲マルバノキの花。晩秋の陽射しを受けて咲く姿は、ベニマンサクという名の方がふさわしく思える。 | ▲マルバノキの葉。この写真は落葉したものを撮影したので色があせているが、本来は花と同時に赤く紅葉する。 |
マルバノキは、本州・四国に分布するマンサク科の落葉低木で、春に花が咲くものが多いマンサク科の樹木の中では珍しく、晩秋(10~11月)に濃い赤色の花を咲かせます。赤く紅葉した葉と花をほぼ同時に楽しむことができ、樹木の花が少ない時期に咲くので、お茶花として好まれるほか、庭園にもしばしば植えられる樹木です。葉がハート型で丸い形をしているので、「丸葉の木」と名付けられていますが、花の色からベニマンサクとも呼ばれます。また、種子は翌年のやはり秋に熟し、紅葉、花、種子を同時に見ることができる点も珍しい特徴であると言えるでしょう。
マルバノキは早春に黄色の花を咲かせるマンサクやアテツマンサクと同じマンサク科ではありますが、属は異なっており、マルバノキ属とされています。マルバノキ属の植物は世界的に見ても極めて種類が少なく、日本のマルバノキの他には中国大陸に1亜種(subsp. longipes)が知られているのみです。日本でも長野、滋賀、岡山、広島、高知県の5県のみに分布が知られており、岡山県における自生地は県北部にわずか1か所と局限されていますが、業者やマニアによる採取、生育地の森林の状態の変化などにより絶滅が危惧される状況であり、2004年には岡山県希少野生動植物保護条例による指定希少野生動植物に指定されました。
マルバノキの花は、5弁の花びらがまるで星かヒトデのように見える面白い形をしていますが、その花のつき方もユニークで、2つの花がぴったりと背中合わせに同時に咲きます。これはマルバノキ属の大きな特徴です。学名のDisanthusも「2」を意味する「dis」と「花」を意味する「anthos」というギリシャ語が由来ですし、中国語では「双花木」と表記されます。つぼみは開花前は丸い1つの花芽なのですが、開花の少し前になると2つのつぼみがついた短い枝が伸び、まるで「打出の小づち」かおもちゃのハンマーのような形になります。その後、小づちの叩く部分が破れて(開いて)来て、中から赤い花びらが登場します。
当園では、県中部の山中で発見された個体からの挿し木苗由来のものを植栽していますが、この県中部のマルバノキは、かつて苗木業者が圃場としていた場所に生育していることから、残念ながら、野生品ではない可能性が高いとされています。
▲2つの花が背中合わせに咲く | ▲開花直前のつぼみは「打出の小づち」のようにも見える |
▲花は5弁で星かヒトデのような形をしている |