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重井薬用植物園
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おかやまの植物事典

キビノミノボロスゲ(カヤツリグサ科)

キビノミノボロスゲは1903年(明治36年)5月3日、当時岡山県吉備郡高松農業学校の教諭二階重楼氏が、近くの神社で採集されたものを東大へ送り、中井猛之進博士が新種として発表されましたが、後日新種ではなく中国大陸や朝鮮半島にある植物と同一種と訂正されました。
和名は、採集地から吉備の国のミノボロに似たスゲという意味ですが、意味を知らない人には、カタカナ書きの種名を見て、何処で切って読むのかが理解しにくいだろうと思います。
何年か前のことですが、絶滅寸前のこの植物を、岡山市の半田山植物園が自生地から種子を採取してきて、園内に増殖しようと播いているところをテレビのニュースで見たことがあります。そのときのアナウンサーが、原稿の種名を「黍の実のボロスゲ」と読んだように聞こえました。種子が黍に似ていたので錯覚されたのかも知れません。
キビノミノボロスゲは、日本では岡山市だけに自生している特殊な分布をしている謎の多い植物です。かつては発見地の神社の境内にあった馬場の周辺の溝辺に群生していたものですが、馬場が駐車場に変って全滅し、今では社の横の僅かな乾いた空き地の雑草の中に、細々と生育しているだけになってしまい絶滅が心配されています。戦前には、岡山市の練兵場にも生えていたそうですが、運動公園になった現在では何も残っていません。
当園では、1984年(昭和59年)6月3日その神社で採種したものから実生苗を作り、園内の湿地の周辺に移植し繁殖させています。また、一部の苗は県の自然保護センターへも植栽してもらっています。
キビノミノボロスゲは美しい花が咲くわけでもなく、見栄えのしない雑草にしか見えない草ですけれど、当園では貴重な美しい花の咲くオグラセンノウやヤチシャジンと同じ場所に、仲良く肩を並べて育っています。

キビノミノボロスゲ キビノミノボロスゲ

 

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