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おかやまの植物事典

ヒメウズ(キンポウゲ科) Semiaquilegia adoxoides

関東地方以西の路傍や田畑のあぜなど草丈の低い草地では群生することもあるが、森林内にも生育する。 花は3~5月に咲く。白色の花弁に見えるものは萼片でさらに内側の淡黄色で筒状の部分が花弁。
▲関東地方以西の路傍や田畑のあぜなど草丈の低い草地では群生することもあるが、森林内にも生育する。 ▲花は3~5月に咲く。白色の花弁に見えるものは萼片でさらに内側の淡黄色で筒状の部分が花弁。

 

ヒメウズは、関東地方以西の本州、四国、九州にかけての路傍や田畑の畦畔、人家の庭など、草丈が低く日当たりの良い場所に生育する、高さ10~30cmほどの多年草です。 草地では群生することもあり、草地の植物の印象が強い植物ですが、多少の日照があれば、森林内にも生育します。 ただし土壌が攪乱された場は苦手なようで、田畑周りでは耕耘される範囲には少なく、草刈りのみで管理されているような場所に生育することが多い印象です。 岡山県内においても、北から南まで、ほぼ全域でごく普通に見られます。 国外では韓国の一部および中国にも分布します。 オダマキAquilegia 属に含む見解もありますが、現在は独立したヒメウズ Semiaquilegia 属として扱う見解が主流のようです。 なお、現在ヒメウズ属の植物とされているものは本種1種のみです。

花は茎上部の総状花序に下向きに咲く。 花弁の基部は短い距となる。花柄には開出毛と腺毛が生える。 根生葉は長い柄があり、3出複葉。 小葉は両面無毛、表面は緑色、裏面は白っぽく、時に薄い赤紫色を帯びる。
▲花は茎上部の総状花序に下向きに咲く。 花弁の基部は短い距となる。花柄には開出毛と腺毛が生える。 ▲根生葉は長い柄があり、3出複葉。 小葉は両面無毛、表面は緑色、裏面は白っぽく、時に薄い赤紫色を帯びる。

 

花は3~5月、茎上部の花序に3~5個の白色からやや紅色を帯びた直径5mmほどの花を下向きに咲かせます。 5枚の花弁に見えるものは萼(がく)が花弁状になったもので、さらに内側にある、直立して筒状になって雄しべと雌しべを囲んでいる、淡黄色の部分が花弁です。 花弁の基部は短い距(きょ)となっており、萼片の間からわずかに突き出します。 花柄には2個の小苞(ほう)があり、開出毛と腺毛が生えています。 また、茎や根生葉の葉柄には軟毛があります。 根生葉は長さ1.5~5cm、幅1.5~7cmの3出複葉、長い柄があります。 小葉は扇形~広卵形、表裏無毛で表面は緑色、裏面は白っぽく、しばしば薄く赤紫色を帯びます。花後には2~4個の果実が実ります。果実は長さ6mmほどの袋果(たいか/乾燥すると1本の線に沿って裂開し、種子を散布する)で、内部の種子は暗褐色~黒色、長さ約1mmほどの卵状だ円形をしています。 種子の表面には多数のしわ状の突起があります。

果実は長さ6mmほどの果実(袋果)が2~4個実る。 果実の形状がトリカブトを思わせることも和名の由来か。 種子は暗褐色~黒色、長さ1mmほどの卵状だ円形。 種子表面には多数のしわ状の突起がある。
▲果実は長さ6mmほどの果実(袋果)が2~4個実る。 果実の形状がトリカブトを思わせることも和名の由来か。 ▲種子は暗褐色~黒色、長さ1mmほどの卵状だ円形。 種子表面には多数のしわ状の突起がある。

 

和名は「姫・烏頭」で、「小さな烏頭(うず)」を意味します。 「烏頭」とは、本種と同じキンポウゲ科で有毒植物として有名なトリカブト類の別名もしくは根の生薬名で、トリカブト類の花の形状がカラス(烏)の頭部を思わせることが由来となっています。 本種の花の形状はトリカブト類の花にはまったく似ていませんが、袋果の形状や、3出複葉となる葉の様子がトリカブト類の葉(掌状に3~5裂するものが多い)を連想させる形状であることに加え、地下の浅い位置にある本種の塊茎の様子も、トリカブト類の根を乾燥させた生薬の「烏頭」あるいは「附子(ぶし/ぶす)」を思わせることから、小さなトリカブト=「ヒメウズ」と呼ばれるようになったのではないかと考えられます。

属の学名の「Semiaquilegia」は「semi(半分)」+「aquilegia(オダマキ属)」を意味し、種小名の「adoxoides」は、ギリシャ語で「目立たない」ことを意味する「adoxos」に由来します。 属名、種小名ともにオダマキ属より植物体のサイズが小さいこと、あるいは花に長い距を持つオダマキ属に対して、本種の花の距が短く目立たないことを表したもののようです。

本種の塊茎は日本では生薬としての利用はありませんが、中国においては「天葵」と呼ばれ、全草あるいは塊茎を乾燥させたものを生薬として利用するようです。 ただし、トリカブト類ほどの猛毒(アコニチンなどのアルカロイド)は持っていないようですが、ウマノアシガタやセンニンソウ、オキナグサなど他のキンポウゲ科の植物同様、全草にプロトアネモニンと呼ばれる毒成分を含む有毒植物であり、草の汁が皮膚に付いた場合には水疱などの炎症を起こすこともあるため、注意が必要です。

(2023.3.26)

ヒメウズの塊茎。比較的浅い位置にあり、目にすることも多いことも「姫烏頭」の名が付けられた一因か。 タンナトリカブト Aconitum japonicum subsp. napiforme の花。 トリカブト類は花の形状から「烏頭」とも呼ばれる。
▲ヒメウズの塊茎。比較的浅い位置にあり、目にすることも多いことも「姫烏頭」の名が付けられた一因か。 ▲タンナトリカブト Aconitum japonicum subsp. napiforme の花。 トリカブト類は花の形状から「烏頭」とも呼ばれる。

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